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大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)40号 判決 1975年3月10日

原告 池田信晴

被告 木戸外文

主文

当裁判所が昭和四九年(手ワ)第一八六七号約束手形金請求事件について同年一二月二五日に言渡した手形判決を認可する。

異議申立後の訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一原被告双方の求めた裁判

一  原告

1  被告は原告に対し金一〇四万円およびこれに対する昭和四九年二月三日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  被告

原告の請求を棄却する。

第二原告の請求原因

一  原告は別紙目録表示のとおりの記載のある約束手形一通を所持している。

二  被告は大阪市東区南久太郎町一の六〇の大雄ビル三階所在の日宝株式会社の代表取締役名義で右手形を振出した。

三1  同社は被告を代表取締役として当初から大阪府南河内郡美原町北余部八〇番地を本店として登記が経由されているが、同所には会社本店としての実体はない。

2  同社は前記二の南久太郎町一の六〇には本店の登記はもとより支店の登記も有しないし、同所のビルの一室には事務机を置いただけで会社営業所としての実体もない。

3  右各事実からすると同社はその存在を否認されるべきである。

四  南都銀行は満期の日に支払場所において支払担当者に対し支払のため右手形を呈示したが、支払がなかった。

五  原告は右銀行に対し拒絶証書作成義務を免除して右手形を裏書譲渡したが、不渡により昭和四九年二月二日同銀行に手形金を支払いこれを受戻した。

六  よって原告は被告に対し右手形金およびこれに対する受戻の日の翌日から完済まで手形法所定の利息の支払を求める。

第三右請求原因に対する被告の答弁

同三の事実中、1、2各前段の事実は認めるが、その余の事実は否認する。

第四証拠関係≪省略≫

理由

一  請求原因一、二、四、五の各事実は被告において明らかに争わないので自白したものとみなす。

二  請求原因三について

1  同1前段の事実は当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によると、同1後段の事実を認めることができ、右認定に反する資料はない。

2  同2前段の事実は当事者間に争いがない。≪証拠省略≫によると、大阪市東区南久太郎町一丁目六〇番地大雄ビル三階の一室には、日宝株式会社の標示がなされ、昭和四九年一月までは四名程の従業員を以て営業活動が行なわれていた事実を認めることができる。原告は同所は事務机を置いただけで営業活動がなされていた形跡がない旨主張するが、前記認定を覆えして右主張事実を認めるに足る資料はない。

3  右各事実によると、日宝株式会社はその登記がなされているとはいえ、右は本店所在地にみられるように当初から実体に副うものでなく、また≪証拠省略≫によると、もともと同社は資本金を一〇〇万円とし、株主は被告およびその親族、知人九名を以て設立されたとするもので、事実上の出資はほとんど全部被告がしている事実を認めることができるのであって、これら各事実からすると、被告の前記南久太郎町での営業活動は同社の標示のある事務所でなされた事実のいかんにかかわらず、その実体は被告個人の営業活動にほかならないものと認めることができる。

4  以上のとおりであるとすれば、同所における営業活動に関し同社はその存在を否認されるべきであり、したがって本件手形の振出については被告個人においてその責任を負うべきものといわねばならない。

三  してみると、原告の本訴請求は理由があるから認容すべきであり、本件手形訴訟の判決と符合するから、民訴法四五七条一項本文により右判決を認可することとし、訴訟費用の負担につき同法四五八条一項、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 高田政彦)

<以下省略>

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